2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2010/8/15 日曜日

メイシネマ上映会2010夏

今日は午後、メイシネマ上映会2010夏に行ってきた。ちなみに、ゴールデンウィークに3日間開催しているのは”祭”だけど、夏・秋は”上映会”。今回の上映は青原さとし監督特集。僕が初めて青原さんにお会いしたのは、ちょっと不思議な縁だった。僕の亡き父は浄土真宗のお坊さんだったのだが、ある時、帰省していた際に「「本願寺新報」にこんなドキュメンタリー映画が紹介されているが知っているか?」と聞かれた。紹介されていた映画が「土徳」だった。気になったので、下北沢に見に行ったら青原さんがおられた。「土徳」の中にも出てくるが、青原さんもお寺の生まれで得度れている。さて、前置きが長くなったが、今日見たのは『三百七十五年目の春風』という作品。内容は広島市西区井口の龍口山正順寺(浄土真宗本願寺派)では、 平成17年より足掛け4年、鐘楼門と本堂の大修復工事が竣工した。 実に250年ぶりの大修復で、正順寺門徒永年の念願であった。 この映画は、昨年、秋から正順寺にカメラが入り、 修復工事をめぐる門徒・住職・坊守の想いや、 宮大工、瓦職人の技術の苦労をたずね、 今年4月24日、25日に執り行われた 「親鸞聖人750回大遠忌法要」及び「平成大修復完成慶讃法要」の 準備から実行に至るまでの人びとの動きに半年かけて密着し、 法要の全容を克明に捉えた、という作品。元々は、門徒の方々にDVDを配るぐらいの気持ちで始められたそうだが、撮影するうちに面白くなって「映画」として完成させたそうだ。広島は「安芸門徒」という言葉があるように、浄土真宗の信徒が多いそうだ。(それに比べて岡山県はあまり多くない。)だから、映画に出てくるお寺も大きいし、門徒の数も多いから、法要も大規模で驚く。僕は個人的には、父が亡くなるまで親戚づきあいもほとんどしてこなかったので、父の実家のお寺のこともよく知らなかった。今でも東京と岡山と離れているので、そうそう行けるものでもない。今日はお盆で墓参りにも行けなかったが(7月に行ったから、まぁいいか)、お盆にこういう映画を見れたことはよかった。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:06:10

濃密な一日

午前中、府中に出かけて”『遺言 Part3』福島菊次郎 最終講演&写真展”に行ってきた。福島さんは89歳になられ、今年が最後かもしれないとの思いで「遺言」というタイトルをつけられているそうだ。福島さんと言えば、学生時代のことを思い出す。今日の講演でもお話があったが、福島さんは1980年代のバブル時代に嫌気がさして東京を離れ、1984年に瀬戸内海の島に移住された。しかし、1989年天皇が亡くなったことを受けて、「写真で見る戦争責任」を企画。ところが、当時、右翼を始め様々な妨害があり写真展がつぶされることが相次いだ。そこで、僕が行っていた法政大学でも福島さんの写真展をやろう、ということになり実行員会が結成され、緊迫した雰囲気の中写真展を開催した。(僕は横で見ていただけですが。)講演会も開催し、僕も福島さんと一緒に打ち上げに行った記憶がある。それから20年以上経ったわけですが、2年前の講演は聞きに行けなかったので、今回の写真展の実行委員会の方からのお知らせもあったので、行った、というわけです。写真は約350点あり充実している。福島さんの写真はとてもシャープなことに気づく。学生時代に見た写真が多かったのだが、中でも福島さんのデビュー作とも言うべき「ピカドン」に収録されている中村杉松一家を撮った写真には学生時代にも衝撃を受けたが、今日もあらためて衝撃を受けた。すざまじい写真だ。また、今日見た写真では離島関係の写真も興味深かった。講演では福島さんは敗戦時の様子を克明に語られ、あっという間に時間がなくなっていく。今日、お話を聞いて驚いたのだが、福島さんがプロの写真家になるべく東京に出てきたのが、41歳の時のこと。今の僕と同じ年だ。エネルギッシュなお話だった。

府中を後にして、渋谷へ。ペドロ・コスタ監督『何も変えてはならない』を見る。いい映画だった。が、上映状態にちょっと不満。この映画は1:1.3のはずなのだが、ヴィスタサイズでフィルムを焼いているせいだと思うのだが、カットマスクをヴィスタサイズに合わせて上映していた。まぁ、普通のカラー映画ならそれほど気にならなかったかもしれないが、モノクロでしかもやたら暗い画面が多い映画だから、監督の研ぎ澄まされた構図の妙がぼやけてしまって、イライラした。映画は女優で歌手のジャンヌ・バリバールのドキュメンタリー。リハーサルやレコーディング、あるいはコンサートをひたすらじっくりと写しだす。画面が美しくて引き込まれるが、構造はいたってシンプル。そこがいい。照明が素晴らしく、普通のテレビの取材などでは絶対許されないような、一部分しか照明が当たっていない画面が雰囲気を作る。別の見方をすればアンニュイな雰囲気だけで押し通したとも言えるけど。こういう我儘な映画を見ると勇気がわく。

続いて、『28 1/2 妄想の巨人』を見る。企画コンセプト(舞台版「鉄人28号」のメイキングにフィクションの要素を入れる)は面白いと思ったのだが、映画を見ながら企画倒れ、という言葉が浮かんだ。女性カメラマンが舞台稽古を撮影していくのだけど、全然生きていない。最後の方でやっと展開が動き始めるも時すでに遅し。演出家=押井さんの失踪、という設定も舞台がほぼ完成(何せゲネプロまでやっている)しているので効果なし。もっとも、舞台を混乱させないことが大前提だと思うので、フィクションを持ち込んでも混乱させるわけにはいかなかったのだろう。その辺がどうにも中途半端だと思った。『トーキング・ヘッド』のような映画かと思い、ちょっと期待していたのだけどそうはならなかった。

未分類 — text by 本田孝義 @ 0:31:44