2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2010/8/12 木曜日

「映/画、黒片」

滝本誠の新著「映/画、黒片」を読み終わった。滝本誠さんの文章が好きで、映画評論集を続けて読んでいる数少ない映画評論家。映画を語りながら、美術・小説・音楽と横滑りしていくところが好きだ。新刊のタイトル「黒片」は黒=ノワール、片=映画、ということでフィルムノワールのことになる。以前の書「渋く、薄汚れ」(このタイトルもカッコいい)は比較的古い作品も多く取り上げていたが、新刊では最近の作品が中心。単純にフィルムノワール・ジャンルの映画だけではなく、取り上げている映画はもっと幅広い。舐めるように見る、という言葉があるが、滝本さんはまさに「舐めるように映画を見て、舐めるように映画を語る」という気がする。それにしても、1本の映画から湧き上がる妄想力にこちらも妄想を膨らませる。

未分類 — text by 本田孝義 @ 21:57:38

チラシ撒き/『鉄人28号』

26日から始まる、「検証・日本のメディアアクティビズム」のチラシの印刷が出来たのでOur-PlanetTVに取りに行く。ついでにそのままチラシまきに行く。まず行ったのは、模索舎、続いてタコシェ、ポレポレ東中野。事務所に行って、諸々の作業。(と言うより、チェック。)夜、見る予定だった映画を変更して渋谷へ。UPLINKへチラシを持って行ってから、ユーロスペースへ。押井守さんが初めて舞台演出を手掛けた舞台版『鉄人28号』を収録した映像を見る。(公演は昨年1月。)かなり前に押井さんの企画の一つに「鉄人28号」があって、そのコンセプトを読んで興奮したことがある。結局その企画は実現しなかったようだが、舞台として実現した。舞台公演自体は、NHKでも放送したのだけど、見逃していた。(多分、今日上映していたものはNHKの映像とは違うはず。)さてその内容は、押井さんお得意の「架空の昭和史」の世界を「鉄人28号」に接続したもの。でも、それはあながち間違っていない。そもそも、鉄人28号の設定が、旧陸軍が開発していた秘密兵器なのだから。舞台は冒頭から「野犬談義」の押井節全開。ただ、宝塚風にしたかったという歌が少しこそばゆい。また、最近の押井さんには珍しくギャクも飛ばすが、これもちょっとこそばゆい。舞台を生で見ると違和感がなかったのかもしれないけど、さすがに映画館のスクリーンで見ると気分が違う。もっとも、映像を見ながらふと思ったのは、「うる星やつら」の頃の押井さんはこういう世界が好きだったはずで、最近の方がむしろシリアスになり過ぎていた、とは言えるのかもしれない。押井版「鉄人28号」の肝は、時代設定が1964年というところ。僕はリアルタイムでは知らないが、日本が激変した時代であり、押井さんが他の映画などで何度も言及しているように、その激変に対する違和感がベースになっている。だから、僕はラストシーンにじーん、ときてしまった。妙な感触を持ちつつも、僕は最後のシーンを見て、最近の押井さんの映像の中では一番いいかもしれない、とも思っていた。本当は、今回の上映は『28 1/2 妄想の巨人』という舞台のメイキングを元にした映画がメインの上映。来週1週間しかないのだけど、はたして見えるか・・・。

未分類 — text by 本田孝義 @ 0:44:50