2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2010/8/7 土曜日

怒涛の4日間

今日は8月7日。無事に(?)東京に帰ってきた。この間の動きをざっと書いておこう。

8月3日 7時10分の新幹線に乗って、岡山へ。そこから乗り換えて、宇野港へ。宇野港へ来るのは、本当に久しぶりかもしれない。宇野港芸術映画座のユースプログラムが終わった頃かと思い、会場の駅東倉庫に行く。ここが出来たことは知っていたのだけど、行くチャンスがなかったので、これも何かの縁。暑い会場では、スカイプでアメリカの学生と質疑応答中だった。上杉さんとタハラさんにご挨拶。13:00からの『THIS DAY』という作品を見る。なかなかに複雑な構造の作品で、様々なイメージをコラージュしたような作品。監督がレバノン人ということもあり、非常にポリティカルであり、かつパーソナルな、日本ではあまりないタイプのドキュメンタリーだった。上映後、上杉さんが営んでいる、宇野スロープハウスで休憩。お二人が出かけた後、しばらくして僕は自転車で上映会場へ。港の突堤に大きなトレーラーを置いて、そこにスクリーンを貼った野外上映会。僕自身、自分の映画ではこんな大掛かりな上映は初めてだ。19時半から『ニュータウン物語』の上映が始まる。少しお客さんは寂しかったけど、いい雰囲気の上映でした。質疑応答では、またあれこれ喋ってしまった・・・・。この日の夜は宇野スロープハウス泊。

8月4日 上杉さんが作ってくれたパンケーキの朝食を頂いてから、8時22分のフェリーでいざ直島へ。恥ずかしながら僕は今まで直島に行ったことがなかった。岡山にはしょっちゅう来ているのに、いざ直島に行く時間がいつもなく行っていなかったのだ。瀬戸内国際芸術祭をやっているし、宇野港からはフェリーで20分なのでこの機会に行くことにしたのだった。久しぶりに瀬戸内海の海を渡る。やはり瀬戸の海は穏やかだ。上杉さんに借りた自転車とともにいざ上陸。少し早く着いたので、しばしうろうろしてから、「007  赤い刺青の男 記念館」に行ってみる。映画ファンは知っているかもしれませんが、ここ直島で007のロケをしてもらおう、と誘致運動を盛んにやっていた。その活動を知らせる記念館なのだろう。007関連のグッズや資料、巨大な心臓のオブジェなど怪しさ満載。モニターでは福武總一郎さんも出演している自主映画も放映中。この宮浦地区から山を越えて、本村地区へ。古民家を使った家プロジェクトの作品を見て回る。僕がいいと思ったのは、大竹伸朗、千住博。川俣正さんが始めた向島プロジェクト「島から島を作る」を遠目から見る。(製作中の島には行けないので。)思っていたより小さかったのだが、これから成長するのだろう。この後見た作品を含めて、川俣さんの作品が異色だった。その後、直島カフェ・コンニチワで昼食。知人の知人がやっているお店、ということで顔を出す。昼食を食べながら直島レコードの波多さんと雑談をしていると、地中美術館方面には途中で自転車は通行止めになっている、という情報を聞いたので、急遽、バスで行くことにした。町営バス、シャトルバスを乗り継いで地中美術館へ。土日はとても混んでいる、と聞いていたのだが、この日は平日だったので、それほど混んでいなかったので、ゆっくり鑑賞出来た。自分で驚いたのは、モネの睡蓮。どうしてなのか、自分でも分からないのだが見ながら涙が出てきた。僕はそれほどモネも睡蓮も好きなはずではないのに・・・。ここは、モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの3作家のみが展示されている極めて贅沢な美術館。タレルの「オープン・スカイ」は越後妻有の館でもほぼ同じコンセプトの作品を見て感動したのだが、ここでは床に寝っ転がれないところが少し残念。そして、建築ファンには安藤忠雄設計の名建築として有名だ。ただ、僕にはこの建築には違和感があった。具体的には長くなるので省略。その後、新しく出来た李禹煥美術館へ。ここの設計も安藤忠雄。僕は李禹煥が苦手なのでどうかなと思ったのだが、やはり苦手だった。そしてさらにバスに乗って、ベネッセハウスミュージアムへ。ここも設計は安藤忠雄。この美術館が今の「アート 直島」の起点。さすがにいい作品がいっぱい揃っていた。ここから本村にバスで戻って、自転車をピックアップして再び宮浦へ。フェリーに乗る前のお目当ては大竹伸朗による「直島銭湯 I❤湯」。めちゃくちゃポップな外観と銭湯という組み合わせが楽しい。結構、汗だくになっていたこともあり入浴。中に入って、またまた驚きが。なんと浴室で流れている音楽がフリップ&イーノの「Evening Star」!僕の大好きなアルバム。もう、頭がとろけそうでした。しばし休んでフェリーで再び宇野港へ。この日は残念ながら強風のため上映は駅東倉庫で。上映作品は『JACKY』。2000年にカンヌ映画祭で上映された、オランダの作品。映画はアムステルダムに住む中国人2世の青年を描いた劇映画。と言っても、プロの俳優はおらず、自然な会話、しぐさを丁寧に切り取った作品。なんとも煮え切らない、宙づりな感じがうまく表現されていた。上映後、監督のフー・ピン・フーとスカイプで質疑応答。この日も、宇野スロープハウス泊。

8月5日 8時33分のフェリーで豊島へ。ここも瀬戸内国際芸術祭の会場の一つ。(全部で7つの島で開催されているが、僕は2日間しか行けなかったので2島しか行けなかった。)ご存じのように、この島は1978年から13年間、産業廃棄物が不法投棄され大きな問題になった島だ。詳しい経緯は省きますが、現在は汚染処理が進められている。(最終的な処分地は直島。)これまた恥ずかしながら、豊島に行ったことがなかったので一度行ってみなければ、と思ったということもある。唐櫃浜に着いて、3つの展示を見る。その後、唐櫃岡に行こうとしたのだが、えらい坂道で自転車をひーひー言いながら押して登る。途中、内藤礼/西沢立衛による建設中の豊島美術館を眺める。棚田の風景に当然現れる水滴型の建築。10月、開館予定だそうだ。やっとこさで岡に到着。いくつかの展示を見て、島キッチンで食事。島の食材を使ったランチが美味。再び山越えに挑戦。坂道で心臓が飛び出しそうになり、誰もいないことをいいことに絶叫していた。それでも山である限り、いつかは下り坂がくるわけで、これまた誰もいない下り坂を爆走。甲生に着く。4つの作品を見る。そしてさらにフェリーに乗る予定の家浦まで山越え。途中、横尾忠則の展示を見てから家浦へ。ここでは2つの展示を見る。(内、一つはトビアス・レーベルガーによるレストラン。)思っていたより早く回れたが、それでも5時間。真夏のせいもあって、もうヘロヘロ。僕がいいな、と思ったのはクリスチャン・ボルダンスキー、藤浩志、ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー、安部良、塩田千春。(1作品は断念。)乗船まで時間があったので、産業廃棄物処分場に行こうと思ったのだが、見学自体が予約制になっており、急な申し出に連絡をとってもらったりしたのだがやはり無理だった。住民の方と立ち話でこの問題のことを伺った。今回の芸術祭ではそうした面がほとんど隠されていることに少し寂しそうだった。じゃあ、僕がどう思ったかと言うと、正直、整理はつかない。もうしばらく咀嚼したい、という感じだ。予定より1本早いフェリーで宇野港へ。中村さんと牛丼を食べて、野外上映会場へ。今日の作品は『新しい神様』。監督の土屋さんが東京から来ていた。土屋さんとタハラさんはかなり前からの知り合いだとか。僕は自転車を漕いで疲れていたこともあって、上映中、寝っ転がってうとうとしていた。(作品はもう何度も見ているので。)上映後の質疑応答を聞いた後、お世話になったタハラさん、上杉さんにお別れをして中村家へ。元実家で一泊。

8月6日 6時半のバスで岡山へ。そこから山陽本線で尾道へ。尾道からフェリーで高根島へ。ここであーねこーね塾の「市民メディアを耕す」に一日だけ参加。あいさつもそこそこに、最初の講義が始まる。講師は野崎清さん。元朝日放送の方。テレビの労働現場の話がとても面白かった。ぼくも、つい短い自分の経験を喋ってしまった。いかにも、合宿という雰囲気の昼食を済ませて、午後からは川上隆史さんが講師になってバンクーバー、サンフランシスコ、オーストラリアのパブリックアクセス事情を映像を交えながら聞く。コミュニティーがキーワードだと思った。夕食まで時間があったので、海水浴場へ。海水パンツを持ってこなかったことを後悔。またまた日焼けをしてしまい、顔と腕は真赤だ。夕食後、いろんな方といろんな話で盛り上がる。早めに就寝。

8月7日 皆さんと朝食を食べて9時27分のフェリーで帰路に着く。11時半の新幹線に福山から乗って4時ごろ、無事帰宅。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:38:42