2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2011/3/31 木曜日

第54回 VIDEO ACT! 上映会~路上発!生きるための情報番組~

今日は夜、「第54回 VIDEO ACT! 上映会~路上発!生きるための情報番組~」を行った。僕は司会担当。残念ながら、参加者が少なかった。やはり、東京と言えど、震災・原発事故後、こうした上映会、イベントに行くようなマインドじゃないのかもしれない。でも、一時、開催を迷ったけど、上映してよかったと思う。上映後のトークで、「映像の当事者性」という話題が出たのは有意義だった。特に、震災と絡めて、今、マスコミが流している映像はどこまで当事者性を持っているか、という疑問は僕も持っていたので、いい議論が出来たのではないか、と思う。

このことと密接に関係するのだけど、僕は震災後、原発の状況を伝えるニュース以外、ほとんどニュースを見ていない。僕自身が映像で震災に関係することをやっていないのに書くのは、本当はずるいのかもしれないけど、感じていることを素直に書いてみる。報道関係者は、それこそ過酷な条件の中で大変な思いをしながら報道している、と僕は思う。それでも、時々見えるのは(と言うのも、被災地の報道が始まるとチャンネルを変えてしまうので、正確にはチラ見だ。)、悲劇と感動の押し売りになっていはしまいか。はたして被災者の人が見るとどんな気持ちがするだろう。もしかすると、傷口に塩を塗りこまれるような、醜いことになっていはしないかと危惧している。被災者が望んでいる情報を伝える重要性については前に書いたけど、僕はもうひとつ大切なことがあることに今日気付いた。(大体、いつも気づくのが遅いのだけど。)僕は「癒し」という言葉は安直に使われ過ぎていてあまり好きではないのだけど、適当な言葉がないので、ここでは「癒し」という言葉を使う。被災者の多くは、身近な人を亡くし、家や思い出の品々を失くしてしまった人たちだろう。そうした人たちの心の傷を癒すような、映像、言葉を僕たちは伝えているだろうか。そして、最近やたらと「がんばろう」という言葉を聞くけど、被災していない人たちが叫ぶ「がんばろう」が被災者にプレッシャーになっていないだろうか。多分、本当は被災者の人たちに僕らは「頑張らなくていいよ」という言葉をかけるべきなのじゃないだろうか。被災者の多くは、もう、これ以上ないぐらいがんばっているのだと思う。だから、僕たちが考えなくてはいけないのは、どうやったら彼らの肩の荷を少しでも軽くしてあげられるだろうか、ということなんじゃないだろうか。今の自分にどういうことが出来るか、自分では分からないのだけど。

未分類 — text by 本田孝義 @ 1:12:50