2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2011/3/25 金曜日

『英国王のスピーチ』

正直に告白しよう。3月11日、地震が起きた時、僕は近くのシネコンに行って『英国王のスピーチ』を見ようとしていた。映画館に入る前にコンビニに寄った時に地震が来た。あまりにも大きな揺れだったので、家が心配になって慌てて家に帰った。それから2週間、落ち着いたわけではないけれど、『英国王のスピーチ』を見た。面白かった。予告編を見た感じやアカデミー賞をとったことなどから、非常にオーソドックスな映画を連想していたのだけど、所々、ハッとするようなスタイリッシュなカットもいっぱいあって、このトム・フーパーという若手の監督はいい目を持った監督だと思った。ストーリーは吃音に悩む英国王ジョージ6世と彼を治療する俳優崩れのライオネルの友情物語。ではあるのだが、この映画のもう一つの主題は優れたメディア論でもある点だろう。ジョージ6世は当時の新しいメディア・ラジオを通じて国民に語りかける必要に迫られる。これが少し前の時代なら、周りの者達だけに語っていればすんだはずで、吃音であることも国民が知ることはなかっただろう。マスメディアの発達と吃音という点に着眼した脚本も鋭い。(ちなみに、本当はラジオの最初期は一方向に語るだけではなく、双方向のものだったことは余り知られていない。)(また、吃音で言えば、本人も吃音だったという重松清さんの「青い鳥」という小説もいい。)吃音を克服して、最後大演説をしたら嫌だな、と思いながら見ていたのだが、そうならなかった所も好感。(開戦演説、というのは引っかかるけど。)

スピーチと言えば、巷では選抜高校野球開会式での選手宣誓が話題。僕もテレビで見て感動を覚えた。(その選手宣誓はこれ。)16歳のこんな立派な選手宣誓を聞いてしまって、多くの人はつい「それに比べて菅総理はなあ・・」と思ったことだろう。僕は毎日出てくる必要は全くないと思うけど、震災以後、もう少しは多くの人の心に響く「言葉」があってもよかったとは思う。

最後に少し脱線。メディアのことを少し書いたが、今回の震災後、多くのマスメディアの中でいいな、と思ったのはTBSラジオの”「被災地にあなたのラジオを」キャンペーン”だった。阪神淡路大震災の時もそうだったけど、被災者にとって最も役に立つメディアは今回もラジオだったようだ。それでも、慌てて家を飛び出した人たちがみんな持っているわけではない。そこでTBSラジオは被災地にラジオを届けるキャンペーンをやっている。(27日まで。受付は東京のみ。)こうした活動は目立たないけど、とても意義があると思う。(残念ながら我が家には余分なラジオがない・・。)

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:54:03