2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2008/6/24 火曜日

喜びと悲しみと・・・

今日は一つ嬉しい知らせが届いた。昨秋、まだ正式なチラシもないし、東京公開もしていない頃、どうしても一足早く地元・広島の方に見てもらいたいと思い、横川シネマで上映していただいた。その後、東京公開の折、「広島での上映はありませんか?」という問い合わせを多数いただいたこともあって、少々強引に「ぜひ、アンコール上映をお願いします!」と言っていたところ、今日、アンコール上映が決まった。8月16日~22日のモーニングショー。多分、7月末頃、中国新聞で『船、山にのぼる』について僕が執筆した文章が掲載されるから、多少は呼び水になってくれたらなあ、と思う。せっかく上映してもらって、がらがらだと迷惑をかけてしまうから。

そんなことがあって、喜んでいたら、訃報が飛び込んできた。ドキュメンタリー映画界の大先達・土本典昭さんが亡くなられた。残念で残念でならない。5月ごろ、かなり体調がよくなく、ガンの転移があったことや転院をされたりしていたことはプロデューサーの伏屋さんから聞いていた。僕はその時点で、正直言って覚悟していた。でも本当に亡くなられてみると、何か大きな芯張り棒のようなものがなくなってしまったような感覚がある。もちろん、悲しいのだけど、悲しみだけではない、不安のようなものだ。世の中には多くの監督がいるけど、ドキュメンタリー映画を鋭く語れる人がもういなくなってしまった、という感じを持つ。幸い僕らは土本さんの映画をこれからも見ることが出来るし、土本さんは多くの著作も残されている。来月には「ドキュメンタリーの海へ」という聞き書きも出版される予定だ。ドキュメンタリー映画は決して方法を真似することが出来ない、というのが僕の持論なのだけど、いくらでも学べることはある。そしていつでも作品に帰ることが出来る。多分、今後、追悼上映なども企画されるだろう。

土本さんは僕の『科学者として』をとても評価してくださり、丁寧に電話までいただいて感想を聞かせてくださった。最近、多くの若い監督が同じように感想を聞いたりしていたようだ。僕が直接お会いしたのは、昨年『映画は生きものの記録である』が公開された、その初日が最後になってしまった。今年の年賀状に「働き盛りですね」とあって、身が引き締まる思いがした。

ご冥福をお祈りいたします。

未分類 — text by 本田孝義 @ 20:56:35