2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2010/3/18 木曜日

準備/『アヒルの子』

22日の撮影に向けて、いくつか不足していた機材があったので、ヨドバシカメラで買う。それにしても、自転車で行ける距離にヨドバシがあるとはなんとも便利。

夜、試写会でドキュメンタリー映画『アヒルの子』(監督:小野さやか)を見る。監督の小野さやかは自分が家族の中で「いい子」であり続けた仮面・息苦しさを振り払うために、文字通り体当たりで兄弟・両親にぶつかっていく。感想を先に書くなら、近年まれにみる力作だと思う。監督本人のドキュメンタリー、と書くと、いわゆるセルフ・ドキュメンタリーということになるのだが、その言葉から連想されるイメージとはかなり異なる。特にきちんと撮影者(山内大堂)が付いており、その撮影がとてもいいのだ。泣きじゃくりながら家族に詰め寄る監督、戸惑いながらもきちんと対峙する家族の表情がとてもよく撮られている。その撮り方も2台カメラを使ったのか、切り返しで撮られた劇的なシーンが頻出する。ひねくれた見方をすれば、見事すぎる、と思ったくらいだ。それにしても、これだけ映画の中で主人公が泣いている映画もないのではないか。そして、映画は終盤、大きな喪失感の根本にあった、5歳のとき親から離れて1年間暮したヤマギシ会の記憶に向かっていく。本人の問題としても、映画としてもそこに向かうのは当然なのだけど、やや失速感を感じた。逆にいえば、そこまでのテンションが異様に高い、という裏返しでもあるのだが。・・・と、いい映画だ、と思いつつ、僕はひっかかりを感じていた。そのひっかかりの正体は何か、とつらつら考えていたのだが、どうも今日のところはよく分からない。『アヒルの子』は5月22日からポレポレ東中野で公開。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:24:08