2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2009/10/28 水曜日

鷹取雅一「ドローイングドローム」展

7年前、僕が育った岡山県の山陽団地で「ニュータウン アートタウン」展という美術展を開催した。この美術展の出発点は僕が『ニュータウン物語』というドキュメンタリー映画を撮っていたことにあり、そういう意味では成り立ちからして少しいびつな展覧会でもあった。18名のアーティストに参加してもらったのだが、その中に、当時岡山に住んでいた鷹取雅一さんがいた。(現在は京都在住らしい。)その鷹取さんが東京で初めての個展をやっている、と聞いていたのだが、ついついまだ見に行けておらず、いつまでだったっけ、と調べたところ、もう数日で終わると知って、慌てて行ってきた。展覧会のタイトルは「ドローイングドローム」。ギャラリーに行くと、いやがうえでも天井から垂れさがった多くのドローイングが目に留まる。腰をかがめたり、背を伸ばしたりしながらゆらゆらする絵を見て歩く。奥のほうでは秘密基地のような、鷹取さんのひそかなコレクション(?)を並べた空間が。(ここにあった、女性の足にこだわった盗撮すれすれの写真帳がすごい。)僕は最近の鷹取さんの展覧会を見ていないので、安易なことは言えないけれど、以前見た時の印象からの変化を感じた。根底にある、エロい妄想は変わらないと思うのだけど、あえて例えるなら、以前はその妄想がロケットに乗って成層圏を突き抜けようとしていた感じがあったが、今日見た展示ではその妄想が宇宙空間を漂っているような感じがした。(わかりにくい例えだけど。)どこか静謐な感じを受けたのだ。以前は雑誌の切り抜きなどかなり直接的なものがあったけど、モノクロのドローイングが増えたことがそういう印象を与えたのかも知れない。いずれにしても、とても才能がある人だということをあらためて思った。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:47:32