2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2009/10/20 火曜日

『昭和八十四年』『南京 引き裂かれた記憶』

公開が始まった映画もあれば、公開されて時間がたつ映画もある。今日は気になっていた『昭和八十四年』という、不思議なタイトルのドキュメンタリー映画を見に行った。いくつかの著作も持つ、86歳になる飯田進さんの過酷な人生を描く。戦時中の悲惨なニューギニア戦線、敗戦によりBC級戦犯となった戦後、そして長男がサリドマイド薬害に。かなりの部分は飯田さんのインタビューで構成された作品。その語りから浮かび上がる人生に胸を打たれる。ただ、インタビューを説明字幕を挿入し寸断する構成に前半は少し違和感があった。後半はそのリズムになじんできたのだが。製作者の方々はPVとかも作られているようで、画面構成も字幕の使い方も洗練されている。

同じUPLINKで、その後、試写があったのでそちらも見せてもらった。たまたまある場所で監督の武田さんと会った時に試写状をもらったので気になっていたのだった。映画は『南京 引き裂かれた記憶』というドキュメンタリー映画。上記の映画が洗練されているとすれば、(たまたま続けて見たせいが大だが)こちらはごつごつした印象。とかく論争の的になる南京大虐殺の実相を被害者・加害者への丁寧な取材で明らかにしていく。とにかく、出来るだけ具体的に何があったかを掘り起こしており意義深い。と同時に、今、戦争があったら、自分は何をするだろうか、という怖さも感じる。(「また戦争があったら・・」ということを先の映画の飯田さんも語っていた。)高齢化した方が多く、とにかく証言を残すことを優先せざるをえない事情は重々分った上で思ったのは、いろんな形で撮影された映像がやや見づらかった。こちらは11月14日よりUPLINK FACTORYにて公開。

まったくの偶然だったのだが、両作品とも「戦争」を記録・記憶するドキュメンタリーだった。と同時に、未帰還兵を描いた『花と兵隊』もそうだったのだが、監督が登場人物たちの孫にあたる世代だということ。実際に、『南京』では武田監督が祖父との関係から映画を始める。あの戦争を戦った世代が人生の終幕が近づき、人生の澱のようなものを語っておきたいという心境と、若い世代がドキュメンタリー映画を撮る時にそういう方々に出会った、ということでもある。そこには、もしかすると孫のような世代にだからこそ語りえたことがあるかもしれない。そういう意味では、あの戦争を記録し記憶に留める最後のチャンスかもしれない。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:32:21