2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2009/4/3 金曜日

「ヴィデオを待ちながら」

すっかり遊びほうけている今日この頃。今日は、国立近代美術館で開催中の「ヴィデオを待ちながら 映像、60年代から今日へ」を見に行った。実は僕は、映像に関わる仕事をしながら、映像系の展覧会は苦手だ。展示の仕方にもよると思うのだが、どう映像と向き合えばいいか分からないことが多いからだ。また、偏見であることを承知で言えば、いわゆる実験映画も苦手。だから、この展覧会もしんどいかもしれないな、と思いつつ、こういう展覧会もそうそうないから恐る恐る見に行った。ところが、この展覧会は十分、楽しめた。前半、映像そのものに自己言及するかのような、あるいはコンセプチュアル・アートのような映像が多い。見ながら、まるで”一発芸”みたいだ、と思っていた。一発芸、という言葉が悪ければ、素朴なワンアイディアを愚直に実行してみた、という趣。コンセプチュアル・アートって苦手なのだが(能書きがうっとうしい・・・)、今日、映像を見ながら考えたのは、作者のひょんな思い付きを後づけで、作家本人、あるいは評論家などが意味づけしたものも意外と多いんじゃないか、ということ。(もちろん、作家本人がなにやら難しいことを考えて作ったものもあるでしょうが・・。)自己と他者、作者と観客などなど深く考えればいろんなことが語れるが、展示されている映像は、見方を変えれば、意外とばかばかしかったりする。だから、難しく考えず、「あほなことやってるなあ」と突っ込みを入れながら見るのも面白いんじゃないか、と思った。後半になってくると、じっくり見たいものが増えてきて、ついつい長い時間見てしまった。僕が好きだったのは、ビル・ヴィオラ、ポール・ファイファーの美しい作品。後者はひたすら太陽が映っているだけだが、日の出と日の入りが合成された映像は美しい。また、ペーター・フィシュリ+ダヴィッド・ヴァイスの「事の次第」という作品は、多少大掛かりな(何せ火がいっぱい使われている)「ピタゴラスイッチ」みたい。つい、見てしまった。最後のコーナー”サイト”はとりわけ僕が気になったコーナー。アースワーク、あるいはサイトスペシフィックなアートというのは『船、山にのぼる』と密接に関わる話。どの作品も興味深かった。ロバート・スミッソンの「スパイラル・ジェッティ」は、アースワークの代名詞的な作品としてよく語られるけど、映像を見たのは初めて。映像作品としてはそれほど面白いとは思わなかったが、ラストの空撮はやっぱり美しい。手前味噌になるが、『船、山にのぼる』を作っておいてよかった、と思った次第。

気が付いたら、随分時間が経っていた。いい展覧会だと思います。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:37:36