2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2012/2/5 日曜日

「ミニシアター巡礼」

代島治彦著「ミニシアター巡礼」を読み終わった。昨年発売された時からずっと気になっていたのだけど、自分の映画の最後の仕上げ、公開に向けての交渉などが重なり、なぜだか読むのが怖かったのだ。だから、読むのがすっかり遅くなった。代島さんにはポレポレ東中野時代、僕が初めて映画館で映画を公開した『科学者として』の時、お世話になった。今だから言うが、映画館での公開に正直、厳しい見方をされていたのだが、僕の方はかなり強引に上映させてもらったことを覚えている。しかし、あのチャレンジがなかったら、今はない、ことは間違いない。本題から外れてしまったが、本書は全国のミニシアターを訪ね、代表者や支配人に聞いた話をまとめたもの。著者本人がかつて映画館を運営し、複雑な事情から閉館を余儀なくされた経験を持っているだけあって、通り一遍のインタビューではなく、映画館を運営する楽しみも苦しみも受け止めて書かれている点が読み応えがある。多くのミニシアターで共通しているのは、前史とも言うべき時代があって、自分たちで見たい映画を上映する自主上映がスタート地点であり、徐々に常設の映画館を求めていったことだろう。映画館の経営は「映画が好き」というだけでは成り立たないが、あふれるほどの映画愛がないと出来ないことでもある。ミニシアターの苦戦が昨今、語られていて、僕には打開策などとても思いつかないのだが、デジタル化の波で再び苦境を迎えてもいる。本書に出てくる映画館は、全部ではないが、僕も自分の作品を上映してもらった映画館も多い。映画は出来ただけでは終わらない。上映してくれる人がいて初めて、観客と出会うことが出来る。願わくば、僕も再びそういう映画館で上映したい、と思っている。(追記:僕の名前が1か所出ていたのはびっくり。名前を間違えていたけど。)

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:14:00