2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2012/2/3 金曜日

『傍~3月11日からの旅~』

今日は午後から、伊勢真一監督の最新作『傍(かたわら)~3月11日からの旅~』を試写で見た。伊勢監督が被災地に通っていることは聞いていたので、どういう映画になっているのかとても気になっていた。本作は宮城県亘理町で被災した伊勢監督の友人のシンガーソングライター苫米地サトロさんを震災後4日に訪ねていくところから始まる。このスタンスが多くの報道や映画と違った独特の関係の中から捉えられた被災地の映画になっている。と言っても、長年、優れたカメラマンや録音マンと仕事をしてきた伊勢監督だけあって、親しき仲にも十分な節度を持って接していることが画面から伝わってくる。そしてこうした節度が、他の多くの被災者を写す時にも感じられて、多くの方が容易に乗り越えることなどできない心の傷を感じている様が静かに伝わってくるのだった。そして本作の重要な部分が、サトロさんや友人たちが始めたFMあおぞらhttp://www.town.watari.miyagi.jp/index.cfm/22,0,126,html の活動だ。東日本大震災の後、最も身近なメディアとして各地で新しいコミュニティFMが生まれた。遠く離れた僕のような者は、なかなかその様子を知ることが出来ないのだけど、本作を見るとその様子を垣間見ることが出来る。特に胸を打つのは、月命日ごとに亡くなった方々の名前を伝え続けていること。ウトロさんや奥さんがこみ上げる涙を堪えながら、一人ひとりの名前を読み上げていく。市民メディアの活動や、メディア論を研究しているような方にはぜひ見てほしいと強く思った。そして、特筆すべきは、月と海の映像。伊勢監督の映画では、今までも月と海の映像は重要なイメージとしてよく描かれてきた。本作にも月と海が出てくるが、受け止める僕たちには、いろんな気持ちを投影して月と海を眺めるだろう。だからこそ、本作のクレジットでひときわ大きく映る月がいつまでも心に残ると思う。本作の一般公開はまだ決まっていないらしいけど、子どもたちよ!-いのちは生きるほうへ向かうhttp://www.facebook.com/kodomotachiyo というイベントと、大倉山ドキュメンタリー映画祭http://blogs.yahoo.co.jp/ookurayamaeiga/MYBLOG/yblog.html で上映される。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:47:55