2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2011/12/1 木曜日

「被災地を歩きながら考えたこと」

現在、最も精力的に建築関係の本を出し続けている、建築評論家・五十嵐太郎さんの著作「被災地を歩きながら考えたこと」を読み終わった。五十嵐さんは仙台にある東北大学で建築理論を教えていて、東京と仙台を行き来する生活をされている。3・11の地震が起きた時は東京におられたようだが、東北大学の研究室が入った建物が被災し、研究室が使えなくなってしまった。そんな中、五十嵐さんは宮城と岩手の沿岸部を中心に、北は青森、南は千葉までを実際に歩きながら、建築物がどうなったのか、建築家がどう震災に向き合っているのか、建築に出来ることは何かなどを考察している。まず、被災地の状況を建築という視点から様々な角度でルポされていることが大変意義深いと思う。もちろん、映像では津波で流された家屋、倒壊したビルなどを数多く目にしているが(ちなみに本書にも五十嵐さんが撮られた写真が数多く収録されている)建築史や社会の中の建築などを考えてこられた五十嵐さんだからこそ考察出来た、書かれたことが数多くあるように思う。本書は理論的に何かを煮詰めたものではなく、その時にしか書けないルポとして書かれている。また、建築家のあり方自体が問われるような状況でもあるが、多くの逡巡を抱えながらも数多くの建築家が何かをしようとしている様子も伝わってくる。とてもいい本だと思った。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:34:26