2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2010/1/6 水曜日

『戦場でワルツを』

見たいと思いながら、なかなか見る気分にもならず遅れてしまったが、『戦場でワルツを』を見た。久しぶりに刺激的な映画だった。体裁はアニメーションだが、映画の要素はかなり複雑だ。監督本人の記憶をたどる、実際にあった虐殺事件を題材にしているという点ではドキュメンタリーの要素があるが、パンフレットを読むと制作過程はかなり綿密に脚本を構築していることも分かる。ごく大雑把に言うと、イスラエル兵士としてレバノン侵攻に従軍した主人公(監督)が、ある奇妙な夢を見ていて、その夢が自分が関わった虐殺事件に関係があるのではないか、と失くした記憶をたどり始める、というもの。現実と幻想が奇妙にまじりあい、こうした表現は確かにアニメでしか表現出来ないだろう、と思う。また、人の記憶は少しずつ嘘が混じっているからそういう意味でも興味深い。全体を見て思うのは、加害の記憶に向き合うということはどういうことか、というかなりへヴィーなものでもある。もっとも、映画を見るぶんにはそんなに支障がないが、実際にレバノンで起きた難民虐殺事件の政治的背景はかなり複雑で、パンフレットを読んでやっと分かった。(それでも、やはり分かっていなかったりする。)ラストに出てくる映像の苦さはちょっと最近、記憶にない。まだまだ映画にはやれることがあるんだな、とも思った。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:38:09