2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2011/2/12 土曜日

第2回ニッポン建設映像祭

今日は”第2回ニッポン建設映像祭”に行ってきた。日本の近代都市の建設過程は、数多くの記録映画・PR映画に撮られてきたが、フィルムが劣化していたり、資料が残っていなかったり、意外とフィルムを見る機会はない。ちなみに、PR映画の場合は、制作当時も多くの人が見たわけではなく、株主総会の際に株主に見せたり、わずかにコンテストで上映されたりということしかなかった。(それでも、クライアントが大会社だから制作資金だけは潤沢にあった。)今回の映像祭を主催した、アンダーコンストラクション・フィルム・アーカイブ(略称UCFA)という団体は、建築関係の研究者などが設立した団体で、古いフィルムの調査・研究・保存を続けていくとのこと。その一環で、一般に公開する映像祭が企画され、昨年は大阪、そして今年東京での開催となったそうだ。竹橋のパレスサイドビル・毎日ホールは約200人の観客で熱気むんむん。約半数は建築関係者、約半数が一般ファンのようだ。上映されたのは4本。『パレスサイド・ビルディング』『国立代々木競技場第一体育館』(設計:丹下健三) 『蛇の目ミシンビル』(設計:前川國男)『中銀カプセルタワー』(設計:黒川紀章)。1本目はまさに上映会が開かれた場所。(今後の出来るだけ、その映画に出てくる建物で上映したいそうだ。素晴らしい。)国立代々木競技場第一体育館は有名な吊り構造の建築過程がよく分かって興味深い。蛇の目ミシンビルは、映画関係者は知っている人が多いかと思うが、2年前まで映画美学校があった片倉ビル(これも古い建築だった)の隣にあった建築。現在、両方、すでに取り壊されて再開発中だ。高層プレハブ建築の工法を丁寧に説明している映画だが、建築用語が結構出てきて、僕には不明な言葉が・・・。中銀カプセルタワーは、これもメタボリズム建築の代表作。前3本が大仰な音楽とナレーション、というこの当時のPR映画の技法で描かれているのに対し、この映画は建築家・黒川紀章と建築会社の技術者の座談会と建設過程を描いていて、工夫が見られる。この建物も、取り壊す方針がほぼ決まっている状態だ。今日4本を見て気づいたのは、建築雑誌や本では、完成した写真を見ることが多いわけだけど、建築過程を見るとまた違った面白さがある、ということだった。同時に、こうした映像のアーカイブは本来は国レベルで行われるべきもので、その辺は随分遅れているなあ、と思う。だからこそ、貴重な活動だと思う。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:22:12