2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

« 香川県高松市上映詳細メイシネマ祭’09 »

2009/5/3 日曜日

「なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか」

「なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか」という本を読んだ。美術関係の方はタイトルを見てピンとくる人が多いと思うけど、知らない人のために簡単に書くと、Chim↑Pomというアート集団が、広島市現代美術館での作品展示に向けて、昨年10月21日に原爆ドームの上に飛行機雲で「ピカッ」という文字を描いた。そしたら、地元の中国新聞に取り上げられ、騒動になり、結局、展覧会を自粛した、という出来事があった。この本は様々な角度からこの「騒動」を検証したもの。僕自身はネットで話題になっていたことでしか知らなくて、どうも分からないことが多いなあ、と思っていたので、こうして本で読めてよかった。もっとも、本が出来た時点では作品は未完成であったり、美術館、あるいは新聞社側のコメントなどがなく(拒否されたそうだ)物足りない部分はある。いすれにしても、近年、これだけ話題となった美術上の「事件」はないと思うので、本という形にしてもらったことは意義があると思う。

結局、僕も作品を見ていないので不十分なことを承知で書けば、本冒頭の写真を見ただけでは、表現として弱いのでは、という感想を持つ。今までのChim↑Pomからすれば、脱臼させる強度が弱いと思うのだ。その印象はやはり、「ピカッ」が文字であることが大きい。始めのプランにあった、本当に空を光らせていればまた違ったように思う。もう一つ気になるのは、「手続きが不十分だった」という議論は半分分かるけど、こういう公共空間での表現には全ての人が納得することなどありえないわけで、手続き論にしてしまうのはつまらないと思う。多分、これまでのChim↑Pomの表現からすれば、今回の騒動も丸ごと脱臼させてしまうような表現が出てきた時に、本当に作品が完結するのではないか、と夢想する。(それはとんでもなく難しいけど。)本を買ったのが遅かったこともあって、3月末に3日間だけ開催された展覧会に行けず、残念。

追記:僕が原爆を描いた最も重要だと思う映画がこの夏映画館で公開されるそうだ。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:01:11

コメント (1) »

  1. この事件、管理社会・広島の象徴であり、
    アリバイ用小道具・ヒロシマのなれの果てですね。

    コメント by 青原さとし — 2009/5/5 火曜日 @ 0:42:30

コメント RSS トラックバック URL

コメントをどうぞ