2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

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2011/1/10 月曜日

『やぎの冒険』

世の中では「監督デビュー」という言葉がある。大体使われるのは、自主製作映画を作った時ではなく、映画館で公開した作品を作った時、「監督デビュー」という言葉が使われるようだ。今日、見た映画『やぎの冒険』は昨日から東京・横浜の3館で公開されている映画であり、監督の仲村颯悟(なかむら・りゅうご)くんは何と14歳!中学3年生だ。多分、映画監督としては日本最年少デビューだろう。(世界の例は知らないけど。)14歳と言っても、いままで30本以上作品を作っているのだから、経験はたっぷりあるのだ。本作では撮影から録音など多くのプロが参加しているようだ。映画を見ながら、技術スタッフにプロの人がいると、きちんとした映画になることをあらためて思う。映画は小学6年生の主人公がおばあちゃんの住む今帰仁村に行く所から始まる。場面としては短いけれど、ちょっとロードムービーみたいな沖縄の風景が印象深い。おばあちゃんの家ではヤギを飼っていて、このヤギを食べるために殺すことに遭遇した主人公の葛藤が描かれている。設定で面白いな、と思ったのは主人公が都会=那覇に住む少年として描かれていることだ。僕は映画を見ながら、ふと、小学校の時、祖父母の家に1週間ほど泊まった時のことを思い出していた。祖父の家では牛を飼っていて、ちょうど僕が泊っていた時に売られていった。祖父も牛も泣いていた。また、僕も多分、この映画の主人公のように田舎では「都会の子供」のように見られていたんだろう。映画の語り口はとても達者で少しびっくり。後半、ヤギが逃げてから、子供たちが追いかけて走り出してから俄然、映画も生き生きとする。仲村くんの『島の時間』という作品を昨年見たのだけど、とにかく子供たちが走り回る場面が印象に残っている。本作では少し、おとなしい、気もする。映画のラスト、見終わった直後は少し物足りないかな、とも思ったのだが、映画館を出てから繰り返しラストシーンが思い出され、ああ、あれでよかったんだ、と気付いた。特にタルコフスキーを思わせるような幻想的な場面からほんの数カットで映画を終わらせる力量なんて只者ではない。僕はかねがね、ある年齢でしか撮れない作品があると思っていて、10代の作品で面白い作品を何本も見てきた。本作もつい最近まで小学生だった仲村くん(加えて言えば、本作の場合沖縄生まれ沖縄育ちの地理的条件)だから撮れた作品だとも思う。いい作品だと思う。

未分類 — text by 本田孝義 @ 0:54:57

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