2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

« 『友川カズキ 花々の過失』/会議・忘年会過剰な映像 »

2010/12/19 日曜日

『トロン レガシー』

1982年というのは、SF映画の歴史の中でも特筆すべき年だった。(おじさんのノスタルジーも含まれていますが。)この年公開されて、当時は必ずしも評価されなかったが、後々、語り継がれている映画がある。『ブレード・ランナー』『E.T.』『ダーククリスタル』そして『トロン』。(『E.T.』は大ヒットですが。)僕は『ダーククリスタル』以外は当時、映画館で見た。『トロン』は、期待が高かったせいかそれほど面白いとも思わず、ずっと関心もなかったのだが、後年、どうしたわけか新しい世代からそのビジュアル評価が高まり、僕もあらためて見直してみて、なるほど、と思ったこともあった。(ちなみに、デザイン的に重要なのは『ブレード・ランナー』でも活躍したシド・ミード。)

前置きが長くなったが、そうした近年の再評価の声もあって、新しい技術で作られたのが、続編となる『トロン レガシー』。予告編を見た時から期待は高かったのだが、どうにも微妙な映画だった。僕が不満だったのは、せっかくの3Dの効果があまり感じられなかったこと。次に、前作の主人公を出したことはファンには嬉しいかもしれないし、前作とのつながりではいいかもしれないが、少々薄味の父子ものになってしまったのはどうか。もうひとつは、(これも実は前作でもそうなのだが)ライトサイクルのシーンが早めにあって、見せ場としては後半息切れしていること。そのライトサイクルのシーンも立体的にした点は「工夫」ではあるものの、ビジュアル的には意外と前作の直角に曲がるバイク、の方がカッコいいと思う。特にバイクの光跡が壁になる、という設定は直角だからこそ意味があったのであって、普通に曲がれる上で光跡が壁になるのは分かりにくいし、あまり効果的とは思えなかった。そしてもっと大きく言えば、1982年にはコンピューターが今ほど発達していなかったので、プログラムとユーザーの関係というのは新鮮だったかもしれないが、新作の『レガシー』内のコンピューター世界は基本的にそれほど進化しているようには思えず、前作の世界観を踏襲しつつ新しいものを付け加えるという試みはあまりうまくいっていないように思う。僕はコンピューターって全然詳しくないのだけど、これだけネットが発達した時代ならではのコンピューター内の世界、というのもあってよかったんじゃなかろうか。その辺、やっぱり日本のアニメの方が進んではいるよな、とも思ったり。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:00:41

コメント (0) »

この記事にはまだコメントがついていません。

コメント RSS トラックバック URL

コメントをどうぞ